前日はヒンバ族の"笑わない文化"というものを初めて知り、撮影に苦戦し、落ち込んで、
上手いこと心の距離も縮められず、彼女たちの穏やかな表情を撮ることが出来なかった。
真面目な性格のLesleyは未だに引きずっている様子。
――――― 大丈夫だって、Lesley!
今日は絶対に仲良くなれるから!ヨシダについておいで!と、浮かない顔のLesleyを引っ張って出発。
とりあえず、奥へ奥へと車を走らせて行くと‥‥ヒンバの村を発見。
リーダーに挨拶をしつつ、滞在許可+撮影許可を取っているとゾロゾロとヒンバが集まり出した。
案の定、前日同様、彼女たちの表情は硬い。というか、簡単に笑いそうもない。
―――――勿体ぶらずにココで脱いでしまおー!それが1番手っ取り早い。
Lesleyに" 今ココで脱ぐから彼女たちに話をしてみてくれる? "と頼むと「 え、全然ヒンバとの距離が
縮まってないのに脱ぐの?今脱ぐ意味ある? 」と不安そう。
いやいやいや、Lesley‥‥君は何を言ってるんだ。
仲良くなってから脱ぐのではなく、仲良くなる為に脱ぐのだよ。
( 絶対、こんな状況じゃヒンバ笑わないよ! )といった雰囲気をモロにLesleyは出しながら、
私に促されるがままに彼女たちに交渉を始めた。
交渉の途中、いきなりヒンバが私の手をガチッと掴んで、こう尋ねて来た。
「 何で同じ格好がしたいの?本気で言ってる? 」と。
もー本気だってばー!冗談で脱ぐとかしないってー!
アフリカの少数民族と同じ格好をするのが小さい頃からの夢だったんだってばー!
私はLesleyを通して、私の小さい頃からの思いを伝えてもらった。
すると‥‥
話をするまでは何一つ表情を変えることのなかった彼女たちの表情が徐々に緩み始めた!
そして、彼女たちは「 ナギ、ナギ、ナギ~ 」と手を叩いてリズムを取りながら私を自分たちの家の中に
招き入れてくれたのだ!やたー!私もヒンバになれるー!
―――――早速、ヒンバに囲まれながら服を脱ぐヨシダ。
服を脱ぐとヒンバが歌いながら水で溶いた赤土を顔→ボディ→足と大雑把に大胆に塗りたくってくれる。
そして足の付け根の結構キワドイところまでガシガシ塗り込む彼女たち。
そんな感じで私がヒンバへと変身をしている最中に家の外からLesleyの大きな声が聞こえた。
「 ナギ!脱ぐのは構わないけど赤土は落ちないから絶対に
塗んなよー!帰りもその体で車に乗るんだからなー 」と。
ひー!もう手遅れだよー!
その忠告聞く前にめっちゃ赤土塗られちゃったよー!ってか、赤土塗んなきゃヒンバじゃないよー。
っちゅーことで、Lesleyの忠告は無視して赤土続行。
とりあえず、カメラを握る手以外は赤土をベッタリ塗って貰ってー、アクセサリー付けて貰ってー、
腰巻をグルっと巻いてー、ベルトを付けて貰ったらヒンバの完成!
過去にKOMA族とダマラ族の格好もさせて貰ったけれども、今までの中で1番衣装が重たい!
っていうか、普通に重たい。まさか、こんなに重たいものを彼女たちが身につけているとは思わなかった。
※だって、彼らって裸に近い格好してるから身軽なもんだとばかり思ってた。
重たい衣装と赤土をまとってヒンバと共に外へ出ると‥‥
Oh My God!って声が聞こえて来た。ひー、誰!?Lesleyの声じゃない。
恐る恐る後ろを振り返ると、後ろの方に白人の観光客がいた。
どーやら私の姿に驚いたようだ。"あのクレイジーな子は、どこの国だ!?"という会話が聞こえてくる。
まぁ、まさか、日本だなんて思ってもいないだろう。
とりあえず、白人に構ってる時間は無いので私はヒンバと一緒に写真を撮って貰おうとLesleyを探すと
頭を抱えて崩れ落ちているLesleyがいた。
( ナギ、赤土は塗るなって言ったのに‥‥ )と、ブツブツ言っている。
私が赤土を塗ったことで車が汚れちゃうからLesleyとしては、たまったもんじゃない。
でも、Lesley!
車は確実に汚れちゃうけど、あの笑わないヒンバたちがめっちゃ笑ってるよ!ヒンバになった私を見て!
ヨシダ、ヒンバの笑顔・穏やかな表情を引き出すことに成功したんだよー!!
アフリカの民族( 主に裸族 )と同じ格好をするということが小さい頃からの夢だった私としては
こうやって憧れの彼女たちの前で同じ格好をさせてもらえることが最高に嬉しい。
そして、余所者の私を彼女たちがスッと受け入れてくれるその瞬間が何よりも心地いい。
この彼女たちと同じ格好が出来て、更に彼女たちと距離が近くなる瞬間がもーう快感ッ!
さぁ、次はどの民族に会いに行こうかなー。